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アメリカと日本

「世界政治の掃除人」となるのが使命の大統領、トランプ

2017年06月9日

今回は「論」というより「つれづれなる感想」である。息抜き記事で、精密なものではないので、気楽に読んでいただきたい。トランプが大統領に就任以来、感じていることだ。

トランプという大統領は、つくづく面白い人物だと思う。
ドイツの哲学者ヘーゲルはナポレオンを「世界精神(ヴェルト ガイスト)」と呼んだが、トランプもまた神がこの世界へ送り出した男なのではないか?…と言えば、「何を大げさな!」とか「奇言を弄するでない!」と言われそうだ。
しかし、「世界精神」にも大物から小物まで、正統派から変人までいると思うのだ。

そう言った目で見ると、トランプの役割は「世界政治の大掃除」なのだ。

6月1日、トランプは地球温暖化への対策を決めたパリ協定からの離脱を発表した。
アメリカ工業界の利益を代弁したもので、「CO2が温暖化の原因とは証明できない」ということが根拠となっている。この理屈は、一面においては正しい。縄文時代は非常に温暖であったし、江戸時代は寒冷であった。地球は呼吸をしており、時代ごとに気温は変化している。

それでも産業革命以降、人間が地下からCO2を解放してきた責任を無視することはできまい。
そのため世界各国はCO2削減に取り組んできたのだが、先進国と開発途上国の間で激しい対立があった。しかし、トランプが離脱騒ぎを起こしたお陰で、「これではまずい」という機運が盛り上がり、一転、合意へ向かった。結果的にはよくなった。


中東でも、やってくれた。

6月6日、サウジアラビアやエジプトら5ヶ国がカタールとの国交断絶を表明。モーリタニアが続いた。
その引き金になったのは、トランプが大統領に就任して最初にサウジアラビアを訪問したことである。

カタールは面積は小さいが天然ガスの埋蔵量は世界第3位で、きわめて豊かである。その豊かさを背景に、サウジアラビアが「敵」とみなすイランに大きな融資を行ったり、イスラム原理主義者を保護するなど、アラブ諸国とは一線を劃した政策を取り続けている。

アメリカは、オバマ前大統領時代にはイランとの関係改善が中東の安定化に役立つと考えて宥和を進める姿勢を取ったが、トランプはそれを引っくり返した。

トランプの行動ということで、ついサングラスをかけて見てしまうが、そもそもはオバマの政策の方がおかしいと言えば、おかしい。イランの核開発を実質的に黙認しかねないものでもあったから、トランプの判断は間違っているとは言えない。アメリカの中東政策としては、オバマの方が異端で、トランプの方が伝統的なものである。
ただ、中東の微妙なバランスを崩したことは確かで、アメリカの後ろ盾を得たと思ったサウジアラビアがイランに対して強気の姿勢を強める中で、今回、ほかの国々と連携して足並みを乱すカタールに制裁を加えたのだろう。

しかし、カタールもいつまでも孤立するわけにはいくまい。食料といったことを考えれば、数ヶ月を目処に折れてくるであろう。
一方、シェールオイルやシェールガスが開発されて中東のプレゼンスが低下する中、アメリカもサウジアラビアにそう大きく肩入れするわけでもない。

さらにサウジアラビアもカタールもISの攻撃対象とされる伝統的な王政国家である点では共通項目があり、ISはイランにとっても深刻な問題で、この件では各国は民族や宗派の違いを超えて協力せざるを得ない。
こうした状況を見ると、結局は協調が進むに違いない。


トランプは確かに大器量の大統領というわけではなさそうが、カーターのような愚か者でもない。
頭のネジが足りず、わがままで隙も多いから騒ぎは起こすが、どこかで問題の「本質」を捉えており、結果的に状況は改善に向かう。それが愛嬌にもなっている。

我が国の民進党と比べてみると、よくわかる。
民進党は綱領で「既得権や癒着の構造と闘う」とうたっているにもかかわらず、先般からの加計学園問題では、安倍内閣が岩盤規制を打破するために設置した国家戦略特区を廃止する方向へ動いている。
安倍氏を追求する様子はなかなか頭脳明晰だが、「本質論」から言えば、文科省や日本獣医師会などの既得権益を保護する側にまわっている。国民にとって、百害あって一利もない。これはトランプの逆パターンだ。

トランプについては異常者扱いする意見も多いが、もう少し暖かい目線で見守ってやってもいいのではないかと思う。
事を荒立てて膿み出しをする「政治の掃除人」としての役割が4年で終われば1期で大統領職を去るであろうし、もう少し長く必要とされれば、2期8年務めることになるだろう。

いずれにせよ、役割を終えて舞台を降りるときには、世界も、アメリカも状況は少しよくなっているのではないのかと思うのだ。

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著者 著者

【著者】
広沢 大之助

出版業界でおもに社会科の本の編集にかかわってきました。全国の中学校の授業で使う公民・地理・歴史の資料集や参考書、その他多くの書籍をつくっています。
「国民のための社会科」では、眼光紙背の精神で、政治経済・社会問題・産業などについて、くわしく、わかりやすく解説していきたいと思っています。
プロフィール

【アメリカと日本】

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