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中国と日本

AIIBが暗礁に乗り上げて幻に終わる、現代版「シルクロード」

2017年5月15日

北京で5月14日から中国の現代版シルクロード構想「一帯一路」フォーラムが開催されている。
歴史上のシルクロードでメインルートにあたる「陸の道」・内陸北寄りの「草原の道」・沿岸を伝う「海の道」を現代に再現する壮大な構想だ。気宇の大きな政治家・習近平らしいロマンあふれる大計画である。沿線の国々にとっても、経済が活性すれば喜ばしい。

しかし、問題は成否である。結論から言うと、「一帯一路」がうまくいく可能性はあまり高くないように思う。構想に不可欠なAIIB(アジアインフラ投資銀行)もうまくいっていない。


AIIBの目的は、「アジアの経済発展を支援すること」とされている。しかし、実態は中国のためのインフラ投資機関に過ぎない。
中国経済は急激に減速しつつある。そこで、縮小する国内市場に替わって海外に活路を開き、各国の公共工事を受注しようというのがその本音の目的だ。
はっきり言ってしまえば、AIIBに参加した国々は中国に騙されて、ノセられた愚か者である。

そもそも貧困国の公共工事なんぞに投資をして、どうやって儲けるのかね?
見返りを求めない国際支援というのなら、理解できるが。

そんなことは、見えている国にはとっくに見えている。したがって、笑顔でエールは送るがお金は出さない。

「一帯一路」構想が進めば多少の道路や橋は整備され、中国にとっては沿線の国々に影響力を強めていく機会にはなるだろうが、AIIBに参加した国は出資金の丸損に終わる可能性が高い。
今後も、日本やアメリカがAIIBに参加する可能性はなく、信用力が低いAIIBが十分な資金を集めることもないだろう。


のみならず、中国にはプランの実行能力がない。よく知られているものとしては、インドネシアの高速鉄道計画がある。首都ジャカルタと第3の都市バンドンの間の約140kmを45分で結ぼうというものだ。
この鉄道では元々日本の「新幹線方式」の採用が決まりかけていたが、中国が破格の価格を提示して横取りした。その後、計画はストップしたままである。
単純な道路くらいなら中国でもつくれるだろうが、高度な技術を必要とするものは無理である。
何十年というスパンで見ればそれなりに有意義な成果も出てくるだろうが、反面「川を工事したら、魚が獲れなくなった」「土壌が汚染され、放ったらかしにされた」というような問題も出てくるだろう。


安倍首相は「一帯一路」フォーラムに、自民党の二階幹事長を派遣した。中国から見れば、副首相級の人材にあたる。これはまあ「おつきあい」だろう。朝鮮半島をめぐって中国と協力し合わなければならないことが多々あるからだ。

日本はどうすべきか? 現実的に評価できるプロジェクトのみ、すでに日本とアメリカが出資しているADB(アジア開発銀行)を通じて協力すればよい。

それにより、アジア諸国への影響力を強めていくのである。

【後記】
「一帯一路」に対しては、完全に撥ね付けるのも、現実的にないかもしれない。ちょっとした支援を「オリーブの枝」として活用し、中国のとのお付き合いに役立てるのも意味があるだろう。
早い時期にヨーロッパに中国に影響を及ぼさせ、ヨーロッパの人々に中国の迷惑さを認識してもらうようにするにも手である。

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著者 著者

【著者】
広沢 大之助

出版業界でおもに社会科の本の編集にかかわってきました。全国の中学校の授業で使う公民・地理・歴史の資料集や参考書、その他多くの書籍をつくっています。
「国民のための社会科」では、眼光紙背の精神で、政治経済・社会問題・産業などについて、くわしく、わかりやすく解説していきたいと思っています。
プロフィール

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