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ヨーロッパと日本

カタルーニャは独立してやっていけるのか? EUへは参加できるのか?

2017年10月29日

なぜ、カタルーニャは独立したいのか?

スペインのカタルーニャで、10月1日、独立を問う住民投票が行われた。カタルーニャはスペインの東側に位置する。州都はバルセロナ。建築家ガウディのサグラダ・ ファミリアで知られている。
住民投票は独立賛成派の圧勝に終わったが、スペイン中央政府は投票は憲法違反という考えにもとづき、自治権の一部を停止。これに対し、州議会は10月27日、正式に独立宣言を採択した。
すると今度は、スペイン上院がカタルーニャの自治権停止を承認。間髪を入れず、ラホイ首相がプチデモン州首相の更迭を発表した。

カタルーニャがなぜ独立したいのかと言えば、中世の小王国時代、この一帯はカタルーニャ公国というひとつの国だった名残りである。武力で屈服させられてスペインの州になったが、分離独立派の拠点が置かれ、暴動の舞台となってきた。中央政府があるマドリードとは、非常に仲が悪い。
言語はカタラン語。フランス語に近く、ピレネー山脈を隔てたフランスには近縁の人々も多く住んでいる。
カタラン語の使用を禁じられていた時期もあり、それもスペインへの憎悪を増幅する要因になっている。

サグラダ・ ファミリア サグラダ・ ファミリア サグラダ・ ファミリア

カタルーニャは、独立してやっていけるのか?

バルセロナは、スペインではマドリードに次ぐ第2の都市である。
古くは織り物などの軽工業で栄え、現在では石油化学、製薬、自動車、電機、機械などの工業が発達し、スペインでも豊かな地域だ。カタルーニャ全体でスペインのGDPの約20%を占め、経済力はフィンランドやポルトガルを上回る。

日本に置き換えれば、観光でダントツ1位の京都府や、トヨタ自動車の本拠地である愛知県が独立宣言を出したようなものだ。政府としては、断じて独立を認めることはできない。

しかし、歴史的に見れば、アメリカをはじめ、多くの国々が独立戦争や独立運動を経験している。独立して悪いということはない。コソボが独立するときにも、国際司法裁判所は「国際法は独立宣言を禁止していない」と明言した。

ただし、独立してやっていけるかどうかは、世界の中で人・物・金を集められるかどうかにかかっている。これができなければ、独立しても結局は他国に依存していくしかない。インドネシアから独立した東ティモールが、オーストラリアなどに治安を頼っているような状態となる。

カタルーニャの場合は成熟した文化があり、経済も発達している。スペイン政府と独立戦争をする腹をくくり、スペイン政府など意に介さないくらいの強い姿勢で、世界各国と通商交渉を行うようであれば、国家としてやっていけるだろう。
まずは国連に加盟申請を出し、国際社会の理解を求め、周辺諸国と国交樹立を図り、国家として承認してもらうようにすればよい。

ただし、不平や不満を主張するのには慣れていても、責任を持って政策を実行する意欲と能力に欠けていれば、独立はおぼつかないだろう。

スペインとカタルーニャ スペインとカタルーニャ スペインとカタルーニャ

EUへの参加は可能か?

ヨーロッパには広域地域連合としてEUがある。ただし、EUに加盟するには、EU加盟国すべての承認を得る必要がある。
カタルーニャの参加を、スペイン政府が認めるわけがない。また、「分離独立する地域は、EUを離脱しなければならない」とする規約もある。プロディ・ドクトリンと呼ばれ、残留はできないので、新たに加盟申請が必要だ。
しかし、必ずしもEUに参加する必要はない。イギリスのように離脱を目指す国もあるくらいなのだから、無理して加盟しなくともよい。

もし、カタルーニャが本当に独立して、加盟申請してきた場合、EUは受け入れを目指すか、拒否するかの2方向の選択を強いられる。
私がEU大統領だったら、何とかじっくりスペインを説得して、カタルーニャの加盟を認めさせる。EU圏内にEUに参加しない国が増えるのは、EUを揺るがすリスクになるからである。
現実的には、加盟するとすれば、数年先くらいになるのではないか?

独立騒ぎの影響は?

スペインではカタルーニャの西北に位置するバスク地方でも、独立の機運が高い。もし、カタルーニャ独立が成功すれば、当然、バスク地方でも独立の話が持ち上がってくるだろう。
また、イギリスはスコットランドやアイルランドなどで、火種を抱えている。スコットランドでは2014年9月に、独立を問う住民投票が行われた。このときは独立反対派が55%の票を取り、僅差で独立をかわしたが、再燃するかもしれない。 アイルランドとイングランドも仲が悪く、飛び火する怖れがある。

そのほか、フランスのコルシカ島では地方議会の議長が、将来の独立に言及している。

現在の世界の大きな流れは、グローバル経済の拡大に伴う貧富の格差などの問題が露呈し、人々が「生活や文化を守るために頼りになるのは、やはり国家だ」と気づき始めた段階だ。
ヨーロッパではEU内でのドイツの一人勝ちが確定したこともあり、各国で不満が噴出して、右派が活気づいている。
その根幹は報道でよく言われるようなポピュリズムの蔓延ではなく、グローバル経済が天井に来ていることへの反作用と捉えた方が、もう少し深いところまで理解できると思う。

独立騒ぎはこのような状況の中で、EUの崩壊を加速させることになるだろう。
しかし、ヨーロッパが分断されれば、ロシアにとって願ってもない状況となる。EUが立ち枯れていくことは、10〜20年のスパンで見れば十分に予想されることであるが、それが何をもたらすか、予断を許さない。

さしあたり、日本人としてはイギリスに飛び火しないことを祈る。話が進んでいるはずの「現代の日英同盟」は、中国や北朝鮮対策として非常に重要なものになるはずだから。

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著者 著者

【著者】
広沢 大之助

出版業界でおもに社会科の本の編集にかかわってきました。全国の中学校の授業で使う公民・地理・歴史の資料集や参考書、その他多くの書籍をつくっています。
「国民のための社会科」では、眼光紙背の精神で、政治経済・社会問題・産業などについて、くわしく、わかりやすく解説していきたいと思っています。
プロフィール

【ヨーロッパと日本】

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