国民のための社会科

日本の政治・経済・社会

国際政治が面白いほど読み解けるマクロな視点から、日本と東アジアを3分で理解する

2017年9月17日

北朝鮮のミサイル発射と核実験が続いている。日本やアメリカが中国やロシアに働きかけても、なかなか協力に応じない。
一方、安倍首相は8月30日から9月1日にかけてイギリスのメイ首相を日本に招き、9月14日にはインドのモディ首相と会って、安全保障や経済など幅広い分野で協力していくことを確認した。
これら一連の動きは、何を意味しているのだろう?

たとえば我が家で取っている読売新聞では、メイ首相との会談について、9月1日1面の見出しは「北ミサイル 日英、対中働きかけ一致 首脳会談 制裁決議へ協力」となっている。2面に「日英FTAの前進模索」とある。

しかし、普通に考えて、イギリスの首相が北朝鮮のミサイル問題で困っている日本を助けるために、わざわざ日本までやって来るはずがない。
また、イギリスは今のところEUに所属し、独自の通商権を持っていない。FTA(Free Trade Agreement/自由貿易協定)の話は、事務方レベルでも、何かの会合のついででも十分だ。
この裏には、何かが隠されているに違いない。

今回は、そうした国際政治が面白いほど簡単に読み解けるようになる、マクロな視点を公開しようと思う。

プーチンが中国をそそのかして始まった? 南シナ海の要塞化

中国の南シナ海の埋め立てや要塞化が始まったのは、いつの頃なのだろう?
有料だがniftyに新聞・雑誌記事検索というサービスがあり、検索をかけると、「50人の兵士を駐留させているラヤンラヤン島で、マレーシアがラグーン(礁湖)内のサンゴをすくって人工島をつくる工事を行なっていた。観光地化することで、支配の既成事実化を図るものだろう。」という趣旨の記事がある。(朝日新聞 1991.06.11軍の見張りで観光開発 南沙群島のラヤンラヤン島でマレーシア)
この場合、主体はマレーシアだが、埋め立てのアイデアの淵源は、このあたりにあるのかもしれない。

また、中国進出に関しては、1974年にベトナムが領有していた西沙(パラセル)諸島の一部に、海上民兵に占領させ、1990年代にフィリピンではミスチーフ環礁を奪ったという話が出てくる。(産経新聞 2009.03.18湯浅博の世界読解「中国の海」で米中熾烈)
この時点では埋め立てや軍事要塞化を行っていたというわけではなさそうだ。日本で中国の南シナ海の埋め立てや要塞化についての報道が開始され始めたのは2014年頃であるから、その少し前くらいから始まったと考えられる。

埋め立てや軍事要塞化の智恵を出したのは、誰なのだろう?
誰もが頭から中国と考えているが、私は何となくプーチンではないかという気がしている。証明はできない。しかし、中東へ進出を図るプーチンが、アメリカの兵力を中東とアジアに分散させるために、「南シナ海を獲れ」と習近平をそそのかしたと考えるのが、一番ストンと腹に落ちるのだ。
もちろん中国の力が強まれば、いずれはロシアと激突する日も来るかもしれない。それは次世代へ送って、大局から見て大きな問題解決を図ったのだろう。 ロシアには優れた情報機関がある。情報には何十年も観測して初めて役に立つものもある。マレーシアが最初かどうかはわからないが、埋め立てのアイデアなどをあらかじめ知って温めておいて、タイミングを測って習近平に伝えたのではないか?
私としては、「当たらずと言えども、遠からず」だと思っている。

中国・ロシア+ドイツvsアメリカ・日本となる東アジア

これからの世界の3大プレイヤーは、中国・ロシア・アメリカである。中国とロシアは国力増強中で、しかも2016年6月、「中露共同声明」を発表し、アメリカが東アジアに介入することに強い拒否感を表明した。つまり、「共同戦線を張って、アメリカを追い出すぞ」という決意表明である。軍事同盟の1歩手前くらいの状態と見てよい。
一方、アメリカは衰退へ向かっている。経済力も落ちてきているが、あと20年もすれば有色人種の人口が白人の人口を上回る。移民の国であるはずのアメリカでトランプが「壁の建設」などと騒いでいるのは、国のアイディンティティが崩壊の危機を迎えて、苦痛にのたうちまわっている姿に他ならない。
最悪の場合、アメリカは昔のニューヨークのサウスブロンクスのように犯罪が横行し、家々の窓が割られているような景色が全土に広がるだろう。日本は、日米安保条約が正常に機能しなくなる日に備えなければならない。

ここに1枚噛んでくるプレイヤーがドイツである。ドイツはEUを私物化することで国力を増し、東ヨーロッパに権益を求めて勢力を拡大させている。その模様はドイツの野望ーEUはドイツにどんなメリットをもたらしたのか?に書いておいた。
これまではイギリスがいわば「お目付役」としてついていたが、すでにEU離脱を表明した。ドイツにとっては、うるさいライバルが「オレ、この会社を辞めるから」と言ってきたようなもので、内心ニンマリである。イギリスは、2019年中にEU離脱ということになりそうだ。

ドイツと日本はマジメ人間同士で気質的には合うが、歴史的には法律や軍事を教わる一方、三国干渉を受けたり、日独伊軍事同盟を結んでともに滅びたり、関係は吉凶半ばする。今後は「凶」になりそうだ。ドイツは貿易の利を求めて、中国に急接近しているからである。

首相のメルケルは東ドイツの出身で、ロシアや中国に親近感を持っている上に、利益を重視して大国の指導者としての責任感に欠けるところがある。
ドイツの技術が中国へ流れていく可能性を、日本は真剣に怖れなければならない。今でさえ軍事力は格段の差をつけられているのに、中国の周回遅れの兵器が一新したら、とても歯が立たない。

ここで話を最初にもどすと、イギリスのメイ首相が日本を訪問した裏は、ドイツ対策ではないかと、私は想像している。イギリスと日本の共通利害といえば、やはりドイツ問題だからだ。ドイツという言葉が両首相から出なかったとしても、踏まえてはいるだろう。だから、これも「当たらずと言えども、遠からず」だと思っている。

一方、インドのモディ首相との会談は、直に中国対策である。中国が南シナ海からインド洋にかけて進出しているため、日本とインドで連携しようということである。しかし、インドは中国と軍事演習を行ったこともある。奇々怪界だが、国際政治は表裏と虚実を織り交ぜながら進んでいく。

EU離脱を選んだイギリスは、「間違った」のか?

日本にとって、ブレグジット(イギリスがEUを抜けること/Britainとexitを合わせた造語)は得ではない。ドイツが中国に最新兵器を売ろうとしても、イギリスがいれば「それはヤメなよ」と言ってくれるだろうが、ドイツのやりたい放題になるからだ。
だから、日本人として、私はイギリスにEUに留まってほしいと思う。しかし、もし私がイギリス人だったら、ブレグジットに賛成するだろう。経済力も文化も異なる国々を統合するという考え方は、限界に来ているからだ。多少の関税がかかっても、そろそろ離脱して距離を置く方が正解だと思う。

日本のメディアはなんとなくEUに留まるのが良識派で、反対するのはポピュリストのように報道するが、あと20年もすれば、EUは関税同盟としての役割は残すとしても、政治機構としては形骸化していると予測される。日本がヨーロッパ諸国とつき合う際にはそのことを頭に中に入れて、EUという大雑破な枠ではなく、個々の国々と丁寧に国交を結んでいかなければならない。

では、軍事的にはどうかと言えば、やはりドイツが不安定要因である。ドイツはNATOの主力のひとつだが、そもそもドイツがNATOに加盟したのは、アメリカがドイツを野放しにしないために加盟させたのである。ドイツとしては、NATOから抜けたいというのが本音だろう。
アメリカが衰弱していけば、ドイツはロシアに接近してアメリカと対抗し、NATOを抜ける道を模索すると思う。

メイ首相が日本にやってきたのは、そういう将来を見越して、「現代の日英同盟」を結ぶ布石であろう。
ただし、今後、中国がイギリスへ接近し、貿易の利などをぶら下げて切り崩しにかかることは確実だ。これは本当に警戒しなくてはならない。

北朝鮮問題をどう見るか?

北朝鮮がミサイル発射と核実験を続けている。これは「アメリカと直接交渉したい。早くしろ!」というサインである。しかし、これまで無視してきたのに、北朝鮮が核を持っていることを認めて交渉に応じたら、その時点でアメリカの面子は潰れ、喧嘩は負けである。動物的な政治カンのあるトランプのことだから、その辺はわかっているだろう。
とは言え、アメリカ政府の中には、北朝鮮が核を持つことを承認するのが現実的という意見も出てきている。それが実現すれば、金王朝は安泰となる。

北朝鮮を黙らせるには、中国の協力が不可欠だ。北朝鮮の石油は9割が中国、1割がロシアから供給されており、これが止まれば音を上げる。しかし、中国とロシアが石油の供給を絶つことはない。
中国にとって北朝鮮は番犬であり、中国ができないことを代わりにやってくれる便利な国である。中国としては番犬をけしかけているのだから、「その犬を大人しくさせてくれ」と言っても、あまり意味はない。
「あー、はいはい」と返事だけして、けしかけ続けるだろう。

なお、新聞では「中国も北朝鮮の扱いには困っている」というような報道があるが、石油を止めればよいのだから、中国にとって北朝鮮のコントロールは容易である。これは、敵の目を欺こうという中国のポーズを、間抜けにもそのまま受け止めているのである。

アメリカが北朝鮮を叩き潰してくれることを期待する人は多いが、アメリカから先に手を出して戦争になることは、まずない。なぜ、日本人のためにアメリカ人が核攻撃を受けながら戦わなければならないのだろうか? それに、核を持っている国にアメリカが先に手を出したことはない。
金正恩暗殺も期待されるが、イラクのフセインやリビアのカダフィのようにならないよう、核を持ち、何人もの影武者を立てていると伝えられる。また、北朝鮮の人民も、圧政に苦しむ者同士で妙な連帯感を持って、それなりに日々を楽しみながら暮らしているという。
金王朝の転覆は難しいだろう。

真に怖れるべきは中国

現実問題として見れば、日本が北朝鮮から攻撃を受ける可能性はそれほど高くない。攻撃を受けるとしたら、グアムやソウルのあとだろう。ただし、沖縄などの米軍基地や、高度なレーダーを持つTHAAD(サード・高高度防衛ミサイル)が配置された京都府丹後市や青森県つがる市車力などは、警戒が必要だ。
また、北朝鮮が朝鮮半島を統一しても、日本へ攻めて来る可能性は低いだろう。金正恩はきわめて怜悧で現実的な判断力を持っており、そこまで誇大妄想を抱くことは考えにくい。

誇大妄想を抱いているのは、中国である。あの国は日本を属国化し、太平洋をアメリカと2分することを本気で狙っている。
病気に例えれば北朝鮮は胃炎だが、中国はがんである。何十年も牙を隠してわからないように侵食し、「十分に勝てる」と見込みが立ったところで襲いかかってくる。

中国人の戦い方は『三国志』や『史記』を読めばわかる。騙されたら、騙された方が馬鹿なのである。
韓国の従軍慰安婦問題や徴用工問題も、中国が裏で糸を引いている。あれは韓国発ではなく、実は中国発である。そして、日本や韓国の新聞社や出版社に入り込み、「心理戦」を展開している。
そのせいで「中国に安全を保障してもらえばいい」などと言う愚か者も出て来る始末だ。しかし、中国の支配下に入ったら自由も民主主義も失われる。植民地となるのだから、年に400万円稼いでいる人は300万円を持っていかれる。そのくらいはわかりそうなものだが、ピンと来ないらしい。

中国対策としては、日本の側からも丹念にハイブリッド戦争(広報・諜報などによる戦争)を仕掛け、民主化を支援することが基本になるだろう。中国共産党にとっては「そんなことはお見通し」であっても続けることが重要であるし、一方で軍備の増強も必要だ。
中国の危険性については、日本が中国の力を弱めるために為すべき、共産党一掃の大戦略にも書いた。ぜひ、お読み頂きたい。

「坂の上の雲」から落ちる時代に必要な防衛力とは?

近代日本は貧しい小国であったが、知恵と工夫によって、ギリギリのところで日露戦争を制し、近代国家として世界の舞台へ躍り出た。そのようすは司馬遼太郎の『坂の上の雲』に描かれている。
今の日本は「坂の上の雲」を目指して上っていった時代とは違う。雲の上でフワフワしているうちに、真っ逆さまに落ちようとしている。

まず、何をすべきかと言えば、憲法改正だろう。中国の侵攻に備えて「待ったなし」の状況だが、未だに日本の社会は平和ボケが多く、国会のまわりで護憲デモをやったりしている。そんなに平和な社会を築きたければ、中国大使館や朝鮮総連へ抗議に行くのが筋だろうが、内弁慶なので自国の政府に向かうのである。

いざというとき自衛隊に助けてほしいと思うなら、憲法で位置づけすべきだろう。自衛隊に助けてほしいのに憲法に記すのは嫌だと言うのは、電車のキセル(ただ乗り)と同じである。「今までキセルで済んだから、これからも無賃乗車を続けたい」では、責任ある社会人であるまい。

また、平和主義を掲げたいなら、それを裏付けるためのきちんとした情報機関も設立すべきだろう。
安全保障に関しては、安倍政権になって安全保障関連法やテロ等準備罪法(改正組織犯罪処罰法)を成立させ、ようやく一歩を踏み出したが、もともと「国の重要情報のほとんどは盗まれて、残るのは高度な企業秘密くらい」と言われていた。

インテリジェンスの重要性については企業の方はよくご存知のはずだが、国会で安全保障関連法案について審議した際には、民進党がさんざんに足を引っ張った。
確かに民主主義と情報活動の両立は現代の国家に欠かせない議論となるとしても、レベルが低すぎた。民進党の方々には専門書は難しすぎるだろうから、できれば落合信彦氏や佐藤優氏の著作、それが無理ならせめて『ゴルゴ13』でよいから読んで頂きたい。

安倍首相はメイ首相をNSC(国家安全保障会議)の特別会合に招いたが、MI5やMI6を持つイギリスの首相から見れば、隙だらけだろう。
イギリスの情報収集力や分析力は、他国を寄せつけないと言われている。模範にして、内閣情報調査室や公安警察をベースに、情報専門の機関をつくってほしい。
インテリジェンスが特高警察のイメージで止まっているこの国で情報機関を設立するには、高い壁を越えなければならず、それはポスト安倍の課題になると思われるが、ぜひ実現させてほしい。

中国が露骨に日本を狙い、ロシアがそれに連携し、ドイツが加わり、北朝鮮が暴れ、親分のアメリカは衰退していくのに、憲法9条により手足を縛られて動けない。
日本は亡国の危機を迎えている。にもかかわらず、大多数の国民は、まったく気がついていない。

日本は戦後にアメリカやソ連、中国によってかけられた呪縛に縛られたままだ。その呪縛を解いて、立ち上がらなければならい。

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著者 著者

【著者】
広沢 大之助

出版業界でおもに社会科の本の編集にかかわってきました。全国の中学校の授業で使う公民・地理・歴史の資料集や参考書、その他多くの書籍をつくっています。
「国民のための社会科」では、眼光紙背の精神で、政治経済・社会問題・産業などについて、くわしく、わかりやすく解説していきたいと思っています。
プロフィール

【日本の政治・経済・社会】

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