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日本の政治・経済・社会

政治家は日本の国としての「連続性」を重んじよ。ー民主党政権とは、何だったのか?

2011年08月27日/2017年3月18日加筆修正

政治を行う上で重要なものは何だろうか? 財政能力、外交力などいろいろあるだろうが、昭和の大総理・中曽根康弘の言葉で忘れられないものがある。それはこの国の政治、経済、文化などすべてをひっくるめて、トータルな視点で後世へ受け継ぐ「連続性」である。

その言葉はかつての民主党・菅直人政権を評したことから生まれた。深い洞察に満ちているものなので、紹介したいと思う。
まずは駆け足で、民主党時代を振り返ろう。

2009年7月、衆議院選挙で自民党は歴史的な大敗を喫し、民主党(現・民進党)が第1党となった。そして、鳩山由紀夫が内閣総理大臣となって、政権の座に着いた。自民党政治に飽き、腐敗の匂いを嗅いでいた国民は、大きな期待をもってこの新政権を歓迎した。
しかし、鳩山内閣(2009年9月16日ー2010年6月8日)は初めのうちこそ、行政の無駄を省く「事業仕分け」などの刷新政策を推めて好評を博したが、次第に実力不足を露呈。沖縄の普天間基地の移転をめぐって迷走し、「日本海は友愛の海」などと言っているうちに中国にいいようにやられ、日米関係にヒビを入れて退陣した。
続いた菅直人政権(2010年6月8日ー2011年9月2日)は、自民党が「消費税を10%へ」といえばそれをパクリ、ソフトバンクの孫正義社長が「東日本ソーラーベルト構想」を打ち出すと急に自然エネルギーへの転換を主張するというように、その場その場でほかの人のよさそうな意見をつないで何とかやりくりする有様で、この頃になると民主党は完全に馬脚を現した。
最後に野田佳彦が総理となった(野田政権2011年9月2日ー2012年1月13日)。野田は財務省出身だけに内政にはいくらかの手腕を見せたが、外交は音痴で、国民の信頼を回復するには至らなかった。2012年12月、衆議院総選挙で民主党は大敗北を喫して自民党が再び第1党となり、同年12月26日、安部内閣が誕生することになる。


さて、中曽根元総理の菅政権への評価とはどのようなものか? それは「過去も未来もない政権」という、身もフタもない一言である。

菅政権を一言で表せば、「過去も未来もない政権」だったと言えよう。
菅首相の唱える「市民主義」とは、私たちの周辺にある市民生活を中心にした政権思想で、歴史や文化の伝統を背負った過去や、目標や理想を持った未来への挑戦に欠けた政治思想である。
この「市民主義」なるものは、ややもすれば選挙目当ての狭小で迎合的な主張が主となり、国としての歴史や、文化との連続性がないという弱点がある。
「連続性」とは過去と未来のあいだに立ち、歴史と文化の裏づけとともに、いかにこの国の未来を切り開くかということであり、保守政治はそこに最も心を砕かねばならない。
民主党が国民より負託を受けた継承政権としての意義と意味は、まさしくそこにあった。
なぜならば、菅政権が認められ評価されたゆえんは、小沢一郎、鳩山由紀夫両氏らと共に、永く続くことで国民に飽きられてきた自民党政治に終止符を打ち、新しい路線を築こうと政権を樹立し、二大政党主義への道を開拓したことにあった。
いわゆる憲政の常道を実践したわけだが、政権の実態は、といえば、左右中立の同床異夢の者たちの寄せ集めであり、憲法改正に対する一致した見解を形成し得ない。民主党には、いまだ網領すらない。つまり雑居的性格から抜け出しきれていないのだ。
菅総理は保守党政治家にない柔らかさと、清潔さと、進歩性を売り物にして政権を保持してきた。だが、透視力や説得力に欠けるうえに当初の推進力が落ち、内閣に対する指導力、統制力は格段に落ちてきた。それは菅総理の国家論を持たない「市民主義」なるものの限界が露呈されたからであろう。(中略)
その政治は得てして、一過的、功利的、場当たり的になり、「過去」と「未来」とをつなぐ「現在」としての政治的継続性がない。このため、衆目を引く課題を次々と見つけ出すことで、政権の延命を狙う「機会主義的」なものになってしまった。
(2011年8月14日 読売新聞 1・2面『地球を読む』「国家なき市民主義の限界」より)


もちろん菅元総理にも民主党にも、功績は「何もない」と言うことはできないだろう。民主党以前の自民党は長期政権の上にあぐらをかいて腐敗し、1年前後で退陣するような、弱くてもろい政権が続いていた。民主党政権が自民党への批判から誕生したものであったことは、明らかである。
しかし、中曽根元総理の言う「連続性」に欠けていたために、高い理想は空中で瓦解し、日本における二大政党制は夢と消え去った。民主党は民進党となった今も迷走を続けており、二大政党制の代わりに自民党内で二大派閥論まで出る状態である。

今後政権を担う者は、自民党にせよ、いつか他党にとって代わられるにせよ、「歴史や文化の伝統を背負った過去や、目標や理想を持った未来への挑戦」への自覚を持って政治を行うよう、心掛けてほしいと思う。

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著者 著者

【著者】
広沢 大之助

出版業界でおもに社会科の本の編集にかかわってきました。全国の中学校の授業で使う公民・地理・歴史の資料集や参考書、その他多くの書籍をつくっています。
「国民のための社会科」では、眼光紙背の精神で、政治経済・社会問題・産業などについて、くわしく、わかりやすく解説していきたいと思っています。
プロフィール

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