国民のための社会科

日本の政治・経済・社会

東京三菱UFJ・みずほが店舗を大幅削減! ー銀行再編劇から見える資本主義の未来ー

2017年11月15日

最近、銀行再編のニュースが多い。
東京三菱UFJ銀行は、窓口で振り込みや資産運用の相談ができるフルバンク型の店舗を、2023年度末までに半減させる、という。
みずほフィナンシャルグループも、今後10年間で約1万9000人を削減し、全国約800店おうち約400店を、個人向けの相談業務のみを行うタイプの店舗などに移行させる。
また、三井住友銀行は、今後3年間でペーパーレス化を進めて、敷地スペースをより効率的に利用し、相談業務を拡充するという。
銀行業界に、いったい何が起きているのか?

先細る銀行の利用客、拡大するコンビニATMの利用客

銀行をめぐる状況は厳しい。駅前の土地代や賃貸料がかかる立地にあるにもかかわらず、人口減やスマホの普及により、店舗の利用者が減っている。現金の振り込みはもちろん、口座の開設や投資信託の買い付けまで、ネットでできるようになった。窓口で求められる業務は、資産運用や住宅ローンの相談などに限られるようになっている。
といっても、日本ではまだキャッシュレス化はそれほど進んでいないから、客はいるはずだ。客はどこへ行ったのか?

答えは「コンビニ」である。駅まで行かなくても、自宅の近くでお金を下ろせるからだ。
驚くべきは、セブン銀行。なんと利益の98%を、ATMの手数料で稼いでいる。昼間は108円、夜間や休日は216円の手数料だが、利用回数は億単位だから、掛け算すると大きい。

セブン銀行の利益 セブン銀行の利益 セブン銀行の利益

その利益は地方銀行の上位クラスに並び、京都銀行より多い、という。預金を企業などに貸し出して金利を受け取る従来の銀行とは、ビジネスモデルが違うのだ。
だが、ATMの場合、引出額の方が入金額より多い。ゆえに本来なら何日かで資金は枯渇し、運営不能になるはずだ。しかし、その穴埋めをしてくれる人がいる。セブン-イレブンのオーナーだ。売上金を自分の店舗にあるATMに入れてくれるので、資金がまわるのである。

セブン&アイ・ホールディングのライバル、イオンでも銀行を設立した。こちらはセブン銀行のような一点突破主義ではなく、従来の銀行ビジネスに近づけたスタイルで勝負している。
たとえば住宅ローンで1000万円以上借りると、イオンや系列のマックスバリュなどでの買い物がいつでも5%引きになる。これが主婦の心をくすぐり、イオン銀行で住宅ローンを組み直す家庭も多いのだ。
また、一般の銀行の金利は0.001%でほとんど貯金をする意味がない状態だが、WAONの機能がついた「イオンカードセレクト」を契約すると、普通預金の金利が0.1%になる(注:金利は変動する)。一般の銀行に100万円を預金しても年に10円しか利子がつかないが、イオン銀行なら1000円つく。驚くほどではないが、利子が低すぎる一般銀行よりはずっとよい。こうした地道な努力がイオンの買い物客を増やす基になっている。小売業ならではの戦い方だ。

コンビニに目を転じると、ファミリーマートは、圧倒的な規模を誇るゆうちょ銀行とのコラボを進めている。
ローソンも「負けじ!」と参入を図り、現在、ローソンバンクを設立準備中。来年2018年中のオープンをめざしている。

メガバンクは海外進出をめざし、地銀は地元で足元を固める戦略へ!

銀行再編には、別のパターンもある。
関西地銀3行の経営統合を見てみよう。ここからは、大手都市銀行と地方銀行の典型的な戦略が見て取れる。

今年の3月、三井住友とりそなが共同で持ち株会社をつくり、来年の4月を目処に三井住友系列の関西アーバン銀行とみなと銀行、りそな傘下の近畿大阪銀行を統合することを発表した。
三井住友は海外進出を強化し、りそなは地方で地盤を固める戦略だ。

三井住友のような都市銀行(メガバンク)が海外進出を図るのは、国内と比べて高い利ざやが期待できるからだ。
TPPはアメリカが抜けて頓挫しかけたが、修復の動きが高まっている。発効すれば、環太平洋諸国で外国の銀行が出資することに対する規制やATMの設置規制が緩和され、新たな商機となる。同時に日本企業の海外進出が増加し、それらの企業に融資するチャンスも増える。

しかし、メガバンクが国際展開を行うにあたっては、2008年のリーマンショック以来、自己資本比率を引き上げて財務基盤を強化することが求められている。そのためには傘下の地銀を手放して、国内の貸出資産を減らせば、自己資本比率が上がる。すると、海外で事業展開を増やす余力が生まれる。
一方、りそなは国内銀行なので、自己資本比率規制は課せられていない。国内の足場を固めて、個人や中小企業向け(リテール)の営業基盤を強化した方がよいと考えたわけだ。

というのも、地方銀行の状況は深刻だからだ。
日銀のマイナス金利政策により、金融機関はお金を中央銀行(日銀)に預けていると、金利を払わなければならない。だから、「何もせずにお金を出て行かせるよりは、企業への融資や住宅ローンなどにまわそう」と考えるだろうという経済刺激策だ。しかし、企業だって無分別に投資はしないし、人は家を気軽には建てない。営業は大変だ。

マイナス金利政策 マイナス金利政策 マイナス金利政策

といっても、マイナス金利の影響を受けるのは、都市銀行も同じ。もっと根本的な問題は、少子高齢化や過疎化による地方経済の低迷だ。融資先のパイが縮小し、利下げ競争が激化している。
生き残るために、地方銀行の合併も進んでいる。最近の例としては、ふくおかフィナンシャルグループ(福岡市)と十八銀行(長崎市)の統合、三重銀行(四日市市)と第三銀行(松阪市)の統合などがある。

メガバンクは海外へ メガバンクは海外へ メガバンクは海外へ

※ただし、地方銀行が必ずしも国内にとどまる、という固定観念は持たない方がよい。
TPPが発効すれば、日本の中小企業の海外進出も進むだろう。加盟国間でバラバラな貿易上の手続きが共通化されれば、人材不足の中小企業でも多数の国との取引が可能になるからだ。安倍政権が2国間FTAではなく、多国間のTPPにこだわる理由のひとつがここにあった。
しかし、中小企業の多くは、地方銀行や信用金庫をメインバンクとしている。地方銀行や信用金庫は海外での知見が不足しているため、融資してくれない……。そんな問題も、何かあったときには国際協力銀行(JBIC)や日本政策金融公庫のような政府系金融機関が肩代わりするというような連携を行うことで、解消していく動きもある。
地方銀行や信用金庫の中には、生き残りをかけて海外に活路を求めるところも出てくるだろう。
※外務省の経済連携課の方に直接、状況を聞いてみた。政府はまだアメリカをTPPに引き戻す姿勢を崩しておらず、日米FTAの交渉は始まっていない、とのことである。アメリカ抜きでも、やらないよりはよい。アメリカを引き戻せれば、さらによい。TPPの成功を期待するが、トランプ氏にも立場はある。この件については、また折を見て、別稿で語りたい。

銀行は、ATM不要の時代に備えよ!

以上が銀行再編の大筋での「パターン別理解」だが、実はもっと深いところで、大きな潮流が流れている。それは「キャッシュレス化」である。
現実の動きとして、中国では電子決済が急速に普及している。その背景には、偽札が多いとか紙幣が汚いといった即物的な理由があるのだが、2020年の東京オリンピック・パラリンピックには中国からの訪日客が多数見込まれることもあって、日本でもキャッシュレス化が進むことが予想される。
iPhoneユーザーの間では、「アップルペイ」を利用した電車の乗り降りも買い物も、自然な行為になっていくだろう。人間は、基本的に便利さを求める生き物だからだ。
一方、ビットコインやイーサリアムのような仮想通貨も普及しつつある。マウントゴックス社から億円単位でビットコインが消失して、同社が取引を停止する事件が2014年に起きたが、そんな事件などあっても、リアルマネーから仮想通貨へという動きは止まらないだろう。

もし、今以上にキャッシュレス化や仮想通貨の普及が進んだら、どうなるか?
答えは簡単。「ATMが不要になる」である。先ほど、セブン銀行がATMの手数料だけで驚くべき収益を上げている話をしたばかりだが、ビジネスモデルそのものが崩壊する日も近いかもしれない。
そのときには、あらゆるコンビニや銀行からATMが撤去されることになるだろう。携帯電話の普及とともに、公衆電話が姿を消したように。

資本主義を揺るがす仮想通貨の衝撃

キャッシュレス化の根は、とてもとても深い。
マウントゴックス社の事件が起きたとき、最初、私は反射的に「ロスチャイルドによる陰謀か?」と思ったのだ。実際にはマフィアや暴力団、あるいはハッキング技術に長じた国や機関、個人の犯行である可能性もあって、わずかな報道記事だけで犯人像を絞り込むことはできないが、これは資本主義の土台を揺るがす問題なのである。
(よく考えれば、ロスチャイルドではあるまい。これが人類史的な動きならば、それを封じるより、リードする側に立とうとするだろう)。
これまで通貨は国が発行・管理していたが、仮想通貨は誰が管理するものでもなく、軽々と国境を超えていく。
仮想通貨は、電子マネーとも異なる。SuicaやWAONやnanacoは、円という実在する通貨によって価値が裏打ちされているが、仮想通貨は無から生まれた。世界中の企業や個人が取引に問題がないかを監視していることが、信用の担保となっている。送金手数料も安い。

仮想通貨の仕組み 仮想通貨の仕組み 仮想通貨の仕組み

仮想通貨は今のところ、通貨というより投機の対象だが、いずれ落ち着いて、世界の取引に大きな地位を占めるようになったら、その影響は甚大だ。送金などの手数料は銀行にとって収益の柱のひとつだが、その柱が崩れかねないからだ。だから、三菱東京UFJグループは「MUFGコイン」、みずほフィナンシャルグループは「Jコイン」などのデジタル通貨の開発を進めている。
その他、アリババには「アリペイ」、LINEには「LINEペイ」もある。もし、アリペイが世界の主導権を握れば、ビッグデータそのものを中国に持っていかれる。中国共産党は、企業にその種のデータの供出を強いるからだ。デジタル通貨は、国の安全保障問題にもなり得る。

企業グループ デジタル通貨
三菱東京UFJグループ MUFGコイン
みずほフィナンシャルグループ Jコイン
SBIホールディングス Sコイン
アリババ アリペイ
LINE LINEペイ

※「MUFGコイン」や「Jコイン」は円とリンクしているので、「仮想通貨」と呼ぶのは、無理がある。
表ではすべて引っくるめて、「デジタル通貨」とした。

※仮装通貨では英語でcryptocurrencyという。暗号通貨という意味で、取引を暗号化したデータである「ブロック」が、鎖(くさり)のようにつながっており、新しい取引が行われると、過去のデータと整合性をとった上で台帳に付け加えられる。これを「ブロックチェーン」という。
作業を継続させるにはコンピュータによる膨大な計算が必要になるため、作業に貢献した人や企業には報酬として、一定量の新規コインが与えられる。この仕組みは金鉱を掘り当てるイメージから、「マイニング(採掘)」と呼ばれる、大手IT企業が参入し、マイニングのために1秒間に約1000京回(京は兆の次の単位)という膨大な計算が世界中で行われている、という。
なお、改ざんを行うには次々と加わっていくブロックのスピードに負けずに計算を初めからやり直す必要がある。マウントゴックス社のような盗難事件は起きたが、システム本体を不正に書き換えるのは、ほとんど無理とされている。ただし、「ほとんど無理」ということは、絶対に不可能ではないということでもある。チューリングやアラン・ケイのような天才は、同時代に何人か必ずいる。きっと、挑戦者はきっと現れるに違いない。欲によるか、才能の誇示によるか、国家の指令によるか、動機はさまざまだと思うが…。

資本主義 は「次」の段階へ!

資本主義が現代に至ってグローバリゼーションを推し進め、格差を広げたことは、誰もが知っている。実際、CNNやニューズウィークといった世界的に信頼の篤いメディアでも、「世界の人口の1%の富裕層が持つ資産の総額は、残る99%の人口の資産を合わせた額と同程度」という報道がなされている。
お金には多くの人々が苦しめられているので、資本主義悪玉論は人気がある。

しかし、それは本当に正しい視点なのだろうか?
冷静に考えて頂きたいが、資本主義が発達している社会と未発達な社会では、発達している社会の方が豊かである。
日本でも、「娘、身売りの際は、役所にご相談ください」などと張り紙がされる時代があった。子どもたちがお腹を空かせて、生の大根をかじる時代があった。その大根すらない家も多かった。
もっと時代を遡れば、応仁の乱の頃は、そこらじゅうに屍体が転がっていたのである。

農村不況 農村不況 農村不況

資本主義は、大きな過渡期の瀬を渡っている。
先進国では利益を受ける側と損失を被る側の不均衡が至るところで発生し、勝ち組と負け組の格差が問題になっている一方で、開発途上国では、貧困は確実に解消されつつある。飢餓層が貧困層に、貧困層が中間層に移行しているからだ。
大きな視点で見れば、資本主義やグローバリゼーションは貧富の差を縮め、人権問題を減らし、健康や教育の状況を改善している。ユニセフのレポートなども、私が新人の編集者であった30年前と今では、ずいぶん違う。

そんな中で、仮想通貨は国から通貨の発行権を奪い、資本家からお金の支配権を奪う可能性を秘めている。この先、どう変化し、どう展開するかわからないのだから、「ドルや円に代わるほどではない」などと悠長に構えていると、各国の中央銀行は頭を抱えることになるだろう。
そのとき、仮想通貨は低所得層を豊かにしていくかもしれないし、世界経済を混乱させるだけかもしれない。それを読める人はいないだろう。
資本主義は自らを破壊することで、次の成長段階の基礎を築いているのかもしれない。

資本主義の歴史 資本主義の歴史 資本主義の歴史

※中国や韓国は、期日も契約もいい加減。現代の資本主義とは言えない。それは資本主義の契約の観念は、キリスト教の「神と人との契約」を「人と人との約束」に転換した、西洋のものだからである。日本では、伊藤博文がこの要諦に気づいて、天皇をキリスト教の神の代替として機能させることで、西洋的な資本主義が根づいた。「神様との契約と同じように、仕事の納期や支払いは守らなければならない」が、「天皇陛下への忠義を守るのと同じように、仕事の納期や支払いは守らなければならない」となったのだ。天皇は、意外なところで「役に立っている」のである。
※世界の約3分の1を占めるイスラム圏はどうなっているのかというと、たとえばイスラム教では利子を取ることを禁じている。そこで、イスラム銀行では、銀行と客が利益と損失を共有するパートナーとなり、銀行が投資によって獲得した利益を分配するシステムとなっている。これは西洋資本主義を取り入れた、イスラム式資本主義である。こういう影響も面白い。

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著者 著者

【著者】
広沢 大之助

出版業界でおもに社会科の本の編集にかかわってきました。全国の中学校の授業で使う公民・地理・歴史の資料集や参考書、その他多くの書籍をつくっています。
「国民のための社会科」では、眼光紙背の精神で、政治経済・社会問題・産業などについて、くわしく、わかりやすく解説していきたいと思っています。
プロフィール

【日本の政治・経済・社会】

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