国民のための社会科

日本の政治・経済・社会

衆院選でついに日本最大の格差問題に手をつけるか、安倍政権!?

2017年9月25日

安倍首相が、衆議院を解散しての総選挙を10月22日に行うことを表明した。
民進党は離党者が続いている状態で、対応もままならない。本当は「解党的出直し」をするつもりであっただろうが、安倍首相に先手を打たれた。 もはや、これまで。将棋で言えば、詰んだ。

そもそも民進党には、党としての理念も見えなかった。左派が中心だが中道派も右派もいるのでは、政党とは言えない。ただ、自治労や日教組の支持が得られるので、それを当てにして、活動を続けていた。
自治労や日教組も影響力は及ぼしたいから、民進党なり、民進党の後継政党なりは残るだろう。しかし、立ち枯れてしまったものは、もう元には戻らない。

一方の自民党でも、福田峰之内閣府副大臣が、25日、離党届を提出し、新党「希望の党」に参加する意思を示した。
これをもって「安倍政権も足元が揺らいでいる」と書いている新聞もあるが、全く別問題である。福田氏は2014年12月の衆院選に神奈川8区から出馬し、小選挙区では江田憲司氏に大差で敗れた(江田氏116189票、福田氏73032票)。比例で復活したが、ギリギリの当選だった。
このまま自民党にいては、比例の順位次第では落選する怖れがある。そのため当選する確率の高い新党へ移る、というだけの話である。
強い球団の一軍ギリギリの選手が、弱い球団に活躍する場を求めるようなものだ。

小池百合子氏も、今は人は多い方がよいから、左派でなければ受け入れる。しかし、いずれはもっと高いクラスの人材がほしい、といったところであろう。
以上、前振りである。


今回の衆議院選挙で自民党は、「人づくり革命」「憲法改正」「アベノミクスの加速」「働き方改革」「北朝鮮への対応」の5つを公約として掲げた。新機軸は、「人づくり革命」である。
これは2019年10月に消費税率を10%に引き上げる際、増えた税収を国の借金返済だけでなく、幼児教育の無償化をはじめ、教育や子育て支援に充てるというものだ。

政策としては、政治に興味を持つ人の間では予想されていたもので、「ようやく来たか!」といったところだ。なぜなら、この政策こそ、現代日本が抱える最大の格差問題に手をつけるものだからである。

では、日本最大の格差とは何か? それは世代間格差である。ザックリ言って、60代以上の生涯賃金は3億円。それに対して、20〜30代は2億円しかない。しかし、若者はあまり選挙に足を運ばない。票田となりにくいこともあって、対策が後手にまわっていた。
アベノミクス「第3の矢」の中で、最後に放つ大物となろう。
なお、報道では「消費税の使途変更を問う」とあるので気分で変えたように思う人もいるかもしれないが、この考え自体はかなり前からあった。「狙っていたな」と思う。たぶん財務省との駆け引きもあっただろう。


安倍内閣は、これまで何本もの「第3の矢」を放って企業に有利な状況をつくってきた。雇われる人々よりも先に、雇う企業に対して対策を行うのは、順番から言って妥当である。
しかし、企業は稼いだお金を「内部留保」として溜め込んで吐き出さない。経済では、政策を施してから実体経済へ反映されるまでにタイムラグがあるから、それは仕方がないことだが、十分に吐き出すかどうかは、まだわからない。
そこで、安倍内閣としては、企業対策はひと段落したと見て、若者への社会保障に進もうというわけである。

しかし、私の見る限り、難しい問題が2つ潜んでいる。
まず、誰でも思うことだが、日本の借金は1000兆円を超えている。この点は、大丈夫なのだろうか?

疑問が集中するのは、まずそこだろう。この件については、多くの識者が危険性を指摘してきた。そして、同じくらい多くの識者が「家庭内借金と同じだから大丈夫」とか「プライマリーバランス的には、何とかなる」と語ってきた。この問題は、簡単には読み解けない。正直、私もグラグラしてきた。
その中では元財務官僚の高橋洋一氏の指摘が、最も正鵠を射ていると思う。一言で言えば、「日本の借金1000兆円超えは、ウソ」というものである。

例えば、3000万円のマンションを、全部ローンで買ったとする。借金はいくらだろうか?
財務省はいわば「3000万円」とカウントしている。しかし、マンションには資産価値があり、資産価値が2000万円なら借金は1000万円のはずだ。その意味では、日本の借金は実質的には350兆円しかない。(「借金1000兆円」に騙されるな! 高橋洋一 小学館新書 p.47以下)
では、なぜ財務省はウソを言うのか? 高橋氏は「増税するときには、必ず例外を伴う。その例外を設定してやるからと言って、天下り先を確保するのが目的」と指摘している。

財務省の会計は『予算書』に書かれているが、さまざまな予算が一般会計から特別会計へ繰り入れられ、グルグルとめぐっている。本も分厚く、これを読み解くのは、普通の人間には不可能だ。私も財務省で見せてもらったことがあるが、到底無理だと思った。その点、高橋氏は元財務官僚だけに説得力がある。


もう1つの問題は、もっともっと深い。それは文明論のレベルに関わる問題である。
現在、把握しておくべき世界の大きな流れは、中国とロシアの不安定含みの強大化、アメリカの弱体化、10〜20年先に迫ったEUの枯死といったところだが、その下にさらに大きな潮流がとうとうと流れている。
物質文明から精神文明へ、というものだ。それは先進国で起こっており、日本が先駆けとなっている。

アベノミクスの第3の矢は、なぜなかなか効かないのか?
それは日本人が物質への興味を減少させ、精神的なものに惹かれ始めているからだ。「新しいテレビを買うより、楽器を習いたい、茶道をやってみたい」というのは、その例である。
日本人の国民性としては、古くから習い事などを重んじる傾向があったが、だんだんその傾向は強まるだろう。しかも、少子高齢化が同時進行で進んでいる。

今、私は習い事を挙げたが、これは一例であって、「物質から精神へ」の転換は、30年、50年といった単位で進む。それに伴い、モノが売れない状況も、深まるだろう。
モノが売れなければ、企業は内部留保を吐き出さない。国民の貯蓄金額は増えても、経済は回転しない。

こうして考えていくと、アベノミクスがどれほど難しいかがわかるし、安倍首相が微妙な綱引きを繰り返しながら、なんとか光明を見出すべく、日本経済をやりくりしているのも見えてくる。


衆院選も迫ってきた。民進党は壊滅し、自民党は手傷を負いつつも生き延びるだろう。
現在、日本が置かれている状況は、外交・内政ともに非常に難しい。ただ、骨の髄からの政治家である安倍首相を得ていることは、幸運だ。

私は、彼を「視えている人」だと思っている。日本の国をよい方向へ導いてくれることを、期待したい。

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著者 著者

【著者】
広沢 大之助

出版業界でおもに社会科の本の編集にかかわってきました。全国の中学校の授業で使う公民・地理・歴史の資料集や参考書、その他多くの書籍をつくっています。
「国民のための社会科」では、眼光紙背の精神で、政治経済・社会問題・産業などについて、くわしく、わかりやすく解説していきたいと思っています。
プロフィール

【日本の政治・経済・社会】

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